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研究コンセプト

化石燃料依存からの脱却が社会的要望として高まっていますが、その実現には、二酸化炭素資源化技術のブレークスルーが必要です。私は、①太陽光発電と微生物を組み合わせた二酸化炭素固定化、及び、②藻類バイオマスを用いたバイオエタノール生産、の2つのアプローチで、人類が直面している課題をブレークスルーしたいと思っています。①についてですが、私は、太陽光発電による電気分解から得られた水素を使って、微生物を培養し、二酸化炭素から高付加価値物質を生産する"自然エネルギーの6次産業化"を提案しています。その実現のため、酵素の改良や新しい代謝経路の設計と最適化に関する実験を行っています。②についてですが、現在のバイオエタノール生産では、サトウキビやトウモロコシを原料としていますが、さらに低コスト化や効率化を目指し、藻類が大量に排出する細胞外多糖の利用を考えています。そのため、多糖高生産藻類の単離、育種、遺伝子改変、野外培養に関する実験や、バイオマスの分解や改質に関する実験を行っています。以上に加えて、産学連携大型プロジェクトであるアクアイノベーション事業にも参画し、石油系オイル汚染水(随伴水)の生物処理に関する開発を行っています。

Greenhouse

クロロフィルを用いた

​油分解処理方法

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​ 私たちの住む社会は、石油に依存して発展してきました。しかし、太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギー発電コストは近年大きく低下し、石油を使った火力発電と比較しても安くなっています。そして、さらに安くなると言われています。(注1) 蓄電やスマートグリッドなどの電力シェアリングのインフラが整えば、再エネ発電は一気にエネルギー供給の主役になります。つまり、エネルギーに関しては、脱石油はすでに始まっています。今後、災害リスクや環境保全を考慮して、「どこで?」再エネ発電を行うのかが議論になると思います。​(注1:Hydrogen: A renewable energy perspective, IRENA2019)

 一方、​石油は、プラスチックなど化学製品の重要な原料でもあります。化学製品生産についても、脱石油が進むと考えられます。私の興味は、再生可能な方法で二酸化炭素から化学製品を生産し消費する「カーボンリサイクル」にあります。

 カーボンリサイクルは、二酸化炭素(CO2)をギ酸(HCOOH)、メタノール(CH3OH)、糖(C6H12O6)などの単純な有機物に変換する工程と、それら有機物からプラスチックなどの有用な化学製品を生産する工程に分けることができます。私は、主に前者の二酸化炭素から有機物への変換工程に関して、以下の2つのアプローチに取り組んでいます。

① 再エネ水素と微生物を利用した二酸化炭素固定

② 藻類を利用した二酸化炭素固定

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​ ①については、再エネ電力による電気分解から得られた「再エネ水素」と「二酸化炭素」の混合ガス、もしくは、二酸化炭素と水素を反応させて生産した「ギ酸」を、微生物の餌として与え、微生物の中で有用物質などに変換します。現在、「二酸化炭素と水素の混合ガス」もしくは「ギ酸」を取り込む過程に関する酵素の探索や改良、新しい代謝経路の設計に関する実験を行っています。

 ②については、まず、藻類の光合成能を利用して「二酸化炭素」から「糖質」を生産します。その後、藻類から回収した糖質を、餌として微生物に与えて、バイオプラスチックなどの有用物質に変換します。その実現のために、水田での藻類の野外大規模培養が必要です。

 これらの実現には、実は、広大な面積が必要です(①については、再エネ発電のための面積を含みます)。国内の水田総面積(200万ha)と同等かそれ以上の面積が必要と考えています。これは、耕作放棄地の総面積(38万ha)よりもずっと大きな面積です。つまるところ、我々はそれだけの環境負荷の上に、現在の生活を維持していることを意味しています。しかし、それだけの土地があるでしょうか?私は、国土の大半を占める森林の再開発も必要だと考えています。これは、山がエネルギーや資源の供給元になっていた時代(明治以前)への回帰と考えることができますが、当然、大きな自然破壊を伴います。ですので、多くの人と議論していきたいと思います。例えば、土砂災害のリスクが高い土地に対して、コンクリートで防災する代わりに、藻類培養用の棚田を整備してリモートモニタリングしていれば、生産と防災を両立できるかもしれません。そのような場を里山のようにすれば、手入れの行き届かない荒れた森林よりも豊かな生物多様性を実現することもできるかもしれません。

 以下のリンクに、それぞれの詳細を説明していますので、どうぞご覧ください。

研究テーマの概要

再エネ水素と微生物による二酸化炭素固定

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藻類による​二酸化炭素固定

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